
講師研修、見直し進む−−−刺殺事件受け塾業界
2005.12.27 産経新聞
京都府宇治市の学習塾の教室内で、アルバイトの塾講師が女児を刺殺した事件は、子供を塾に通わせる親たちに衝撃を、「わが子もいずれ塾に」と考える保護者に不安を与えた。「講師の採用基準はどうなっているのか」「適性を判断する基準は?」。そんな保護者の疑問や問い合わせを受け、業界団体や各塾では講師採用に関する基準の見直しや、研修の充実を進めている。(津川綾子)
<人間性重視へ採用にもメス>
「京都の事件以来、塾も安全な場所ではない、と感じるようになった」。こう語るのは、小学2年の娘を週に2回学習塾に通わせている東京都江戸川区の父親(45)。事件後は、「塾に送り届けた際、入口にただ子供を置いて帰るのではなく、講師の顔を見て、『よろしくお願いします』とあいさつするようにしている。どんな顔で、どんな感じの人か・・・を意識して知ろうと努力している」と打ち明けた。
事件を機に膨らんだ塾に対する漠然とした不安感を払拭しようと、学習塾業界の動きは急だ。学習塾約700社が加盟する「社団法人全国学習塾協会」(東京)の稲葉秀雄専務理事は、「事件を受け、講師のコミュニケーション力や人間性を今まで以上に重視しなければいけないと考えている」と話し、対策を急ぐことを強調した。協会では今月21日、塾講師の採用や教育・研修のあり方、教職員の行動指針を定める「倫理要領」を来年の2月までにまとめることを発表。加盟社のほか、他の塾団体にも働きかけ、“塾講師のあるべき姿”を示すことを目指す。
また、それぞれの学習塾でも、独自に講師の適性や能力を見極める動きが活発化し始めた。大手進学塾「SAPIX」(東京)では、9月に発足した「講師の管理に関するプロジェクトチーム」を増員する方針だ。講師歴10年以上のベテランが各校舎の授業を見回り、「生徒をうまくほめて育てているか」「教室の雰囲気は悪くないか」など講師のコミュニケーション能力や指導力を、より多くの目でチェックしていくという。
「市進学院」(同)では現在、担当講師が月に2・3回、保護者に電話で塾での子供の様子を伝えているほか、事務系の教室責任者も3か月に一度の割合で保護者と話をするなど意思疎通を図っているが、今後さらに徹底していき、保護者が講師以外とも気軽に相談ができるような態勢づくりを目指すという。
また、学生などの非常勤講師について、最初の1年間、先輩講師がマンツーマンでつく「世話人制度」を導入している希学園(大阪)では、今後1クラスを講師とアシスタントの2人で担当し、教室運営の悩みなども相談して進めることができるような態勢づくりも検討していく。
一方、事件があった「京進」(京都)では、学生講師を採用する際、過去の賞罰や休停学処分の状況を確認する書類を職員の目の前で記入させ、チェックすることを決めている。
<「適性」どう判断?>
子供を塾に入れる際、講師の力量や講師としての適性を保護者はどのようにして判断すればいいのだろうか。
塾経営研究会(東京)の則竹信二さんは「まずは行きたい塾の体験授業に参加してみることが大切。その際、できれば入塾後に担当となる先生の授業を受けること。またこまめに塾に見学に行き、講師に指導方針を確認するといいだろう。『子供が遅刻したときは、どう対応されますか?』などと具体的に聞くと、『最初はきつくしかりますが、こうやってフォローするようにしています』などと答えも明確になり、講師を理解する材料になる」と話す。
また、塾選びの際、講師陣の「人となり」を優先したい場合は、「地元密着型の小中規模塾の方が、講師が地元の知り合いということが多く、比較的安心感はあるだろう」と語る。
「塾の卒業生やその知り合いを講師として採用するようにしている」と話す、東京都町田市の中規模学習塾「芳村セミナー」の芳村達子塾長は、「(保護者を通じ)事件の影響を感じている。保護者にとって、人間性や経歴などを良く知っている講師の方が、やはり安心感はあるようだ」と語っている。
【日刊じゅく〜る】870号 中学受験塾選びのポイントはここ
1999.03.26 産経新聞
中学受験を目指す親子にとり塾選びは大きな関門でもあり、すでに入塾した新4年生も多いことでしょう。進学塾は周囲の評判や合格実績だけでなく、子供の個性や能力との相性も大切です。こんな塾選びのポイントを紹介します。(福本義彦)
<基本は親子で>
「塾選びは旅行と同じ。パンフレットをよく読み、子供と話し合うところから始まる」と、塾選びの著書もある教育アドバイザーの中島真知子さんは話します。「友だちも入ったから、評判だからと選ぶ場合が少なくないが、塾通いが珍しくないコンビニ感覚になっても、少なくとも5、6カ所は足を運び、子供の能力をどこまでどうやって伸ばすのかを示せる塾を探したい。また、入試情報は格段に入手しやすくなったが、塾の情報力にはかなわない」。
「塾通いは小4からが一般的ですが、最近は小2・3と低学年コースも増えています。難関校合格者が多い大手進学塾は日能研、四谷大塚進学教室、市進学院、SAPIXなどがあり、ena、桐杏学園、城北スクールなどは学校の補習も兼備。大半は入塾テストを行いますが、少数精鋭塾は例外に、少子社会での競争激化で易化し、出題も同傾向なので2回以上受ければほとんど入れる塾もある」。
<個別指導も増える>
レベルの高い塾やクラスは学習の量、質、速度レベルも高く「大手塾でも難関校に入れるのはごく一部。自ら勉強する習慣がなく、何でものんびり型の子は向かない。学力が合わず背伸びさせても自信を失うだけ。学校の授業もやっとだがとにかく私立という子は補習塾の方がいい」と、中島さんはアドバイス。「受験で好成績を挙げる子は、総じて早熟で体力もあり、夜遅くまで勉強しても大丈夫。そうでなければ無理せず、高校受験まで待つのも賢明」とも。
進学塾は数人から数十人の一斉授業が一般的ですが、近年は自立学習塾、東京個別指導学院、スクール21など、一人一人の学力や進度に合わせる個別指導塾も増え、市進学院など大手も導入し初めました。同じ個別指導でもトーマス、四谷アカデミーなどの1対1体制から、講師が数人を受け持つ塾までさまざま。
塾コンサルタントの則竹信二さんは「子供の手元をみながら弱点を補う指導は注目できるが、講師の質は玉石混交。費用も4科とも受ければ要覚悟」と話します。
<直接足を運んで>
実際の注意点は…。難関校合格者数などをアピールする塾は少なくありませんが、合格率も忘れずに。則竹さんは「数より自分の志望校レベルに合格者がいるかどうか」、中島さんは「その塾でどの位置なら志望校に合格できるか必ず塾に聞いて」と忠告します。
派手な広告を出す塾もありますが則竹さんは「チラシの豪華さと中身は関係ない。授業料も明確に入会料、授業料、その他雑費を明記しているのが前提。サービス内容が他塾と変わらないのに時間当たり料金が極端に安ければ人件費が安い、つまり講師の質が悪いとも考えられる。逆に高くても宣伝や施設に費やしている場合もある」としたうえで、「年間50〜60万円の授業料をかけても成績が上がる保証はないことを肝に銘じておくべきだ」と指摘します。
塾間の競争激化もあり「授業料一括前納で解約しても返金されない」という問題はかなり減ったようですが、契約の際はやはり十分な確認が必要です。
いくつか候補が固まったら必ず訪問します。教室長や塾長の話しぶりから子供への接し方や教育姿勢、教室の雰囲気を知る好機。則竹さんは「話術にたけた営業担当者の応対で建前しか見えないこともあるが、下見して授業後も塾生が長く残っていれば居心地良さや講師の熱心さがうかがえる。塾生の口コミには主観が交じるが何人かから聞けばならせる。体験授業はいい機会だが、実際の担当講師でないと意味がない。そのうえで総合的判断を」と言います。
<ブランドより相性>
授業日数や時間、宿題の出し方は塾によって異なります。「塾の大量の教育量を理解できなければパニックに陥る。塾の方針をしっかり把握しておくことが大切で、遅れたら家庭で補うなど母親の管理能力も必要」と中島さん。
IPSは原則4科コースで授業は週に4年が2日、5年3日、6年4日と決めているのに対し、川崎予備校は6年生でも週2〜5日から選択可能。川崎予備校の田中千憲事務部長は「難関校志望者はほとんど5日。10年前なら週4・5日は普通でも、最近は長時間の拘束を望まない家庭が多く、選択制にせざるをえない」と説明。日能研も2月から、4科入試のセットカリキュラムに2科コースを追加。授業日数も週2日から選べるようにしました。予習前提の四谷大塚の平日教室は、家庭学習徹底に父母指導にも力を入れます。中島さんは「親に十分な能力がない場合は、並行して家庭教師を雇うのも一案」。横浜の啓進塾は授業重視で「予習や宿題は一切なし」。曽根嘉浩・副塾長は「6年で自主的に自宅学習したい子に教材を与える程度。実績があるのでこれで信頼いただいている」。IPSの石田温則代表は「自宅学習の際は、親はなるべく離れていただくようお願いしている」。
多くの進学塾は能力別クラスをとりますが、能力基準が総合点か各教科別か、クラス替えの周期がひんぱんかといった違いも、子供が緊張に耐えられなかったり、劣等感でやる気を失ったりするので、能力や性格に照らして選ぶ必要があります。学習を始めてみると違和感があったり、学習成果が上がらないときは「潔くやめて他を探すべきだ。半年一年はすぐに過ぎ時間のムダ。親は常に子供や塾に目を配っていないと」と則竹さんは忠告します。